(2025年9月13日)
4万5000円台も視野に入るが、FOMC前後天井のイメージも
■前回「首相交代は日本株の買い材料」としたが、7日に石破首相が退陣を表明したことで週明けから大幅高。さらに、米国の労働市場の鈍化が鮮明になり、米利下げ期待の高まりよるNY株高も後押し。今週の日経平均は前週末比1750円高と大幅高で史上最高値を更新。TOPIXも揃って史上最高値を更新。
国内では次の自民党総裁選の候補者が出そろいつつあり政局の行方が関心を集めている。高市早苗前経済安保相、小泉進次郎農相の両者を軸に争われる構図が明確になっているが、総裁選は22日告示、10月4日投開票とまだ先。
このため、3連休明けの来週はFOMC(米連邦公開市場委員会)が最大のイベントとなる。ただ、NY株式市場は米国の利下げ局面入りを既成事実とした上昇相場が続いている。このため、パウエルFRB議長が利下げ決定後も先行きについて慎重な態度を示せばマーケットに冷や水を浴びせることになるし、既に大きく買われているためイベント通過による出尽くし反応への警戒もくすぶるところだ。
米利下げへの期待と自民党の総裁選への思惑を支援材料に、市場では「持たざるリスク」を意識する声も出ており、来週の日経平均は大台の4万5000円も視野に入る。しかし、その半面。急ピッチな上昇による警戒感も高まっており、目先の注目イベントであるFOMC通過でいったん天井を打つ展開も視野に入れておきたい。このため、来週の日経平均はFOMC前後の天井をイメージした、4万3000円~4万5000円のレンジを予想。
■来週の主な予定
15日(月)【国内】敬老の日で東京市場休場
【海外】中国8月小売売上高・工業生産指数(11:00)
米9月NY連銀製造業景気指数(21:30)
16日(火)【国内】7月第三次産業活動指数(13:30)
【海外】FOMC初日
米8月小売売上高(21:30)
米8月鉱工業生産・設備稼働率
米9月NAHB住宅市場指数
17日(水)【国内】8月貿易統計(8:50)、8月訪日外客数(16:15)
【海外】米8月住宅着工件数
FOMC最終日、パウエルFRB議長会見(経済見通し発表)
18日(木)【国内】日銀金融政策決定会合初日
7月機械受注(8:50)
「会社四季報・秋号」発売日
【海外】米9月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数
米前週分新規失業保険申請件数
19日(金)【国内】日銀金融政策決定会合最終日、植田日銀総裁会見
8月全国消費者物価指数CPI(8:30)
(2025年9月6日)
国内政局をにらんだ展開か
■今週の日経平均は中国アリババによる新型AI半導体開発の報を受けた週初1日に大きく値下がりし、トランプ関税に対する米高裁の違憲判断が混乱を招いた3日も下落した。しかし、米国の雇用指標の下ブレを背景に9月に利下げを確実視する見方が強まったことや、自動車関税の引き下げ合意の大統領令にトランプ大統領が署名したことも追い風に週後半は持ち直し4、5日で計1079円幅の反発となった。
基本的にはFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待が相場を支える展開が続いているが、そのカギを握る現地5日発表の8月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数が市場予想を下回った。FRBが9月に利下げ幅を0.5%にするとの見方も一部で浮上しNYダウは8月28日に付けた最高値4万5636ドルを上回る場面もあった。しかし、「労働需要の減速ペースは供給を上回る」との見方から米景気悪化への懸念が浮上し結局、5日のNYダウは前日比220.4ドル安の4万5400.8ドルと反落。ナスダック総合指数も同7.3ポイント安の2万1700.3ポイントと3日ぶりに小幅反落。夜間取引の日経先物も大証終値比200円安の4万2870円と反落。8月の米雇用統計を受けた市場は、利下げ観測より米景気のハードランディングを警戒する悩ましい反応となった。このあとは17日に最終日を迎えるFOMC(米連邦公開市場委員会)に向けて11日の「米8月消費者物価指数CPI」が注目されているが、FRBの利下げ観測に大きく影響する内容でなければ波乱要因とはならない見通し。
このため、来週の東京株式市場は海外よりも国内政治をにらんだ展開が予想される。8日に自民党の臨時総裁選実施の是非が決定する。首相交代は日本株の買い材料になりやすく、自民党総裁選の前倒し実施の可能性が出てくれば政局不安が後退し、政策期待先行の買いが入るとの声が聞かれる。ただ、次期首相の候補としては高市前経済安保相と小泉農相が注目されているが、外国人投資家の間では小泉農相は緊縮派とみられているため、「小泉有力」という見方が広がれば株価の上値は重くなるかもしれない。
また、需給面では12日のメジャーSQが最大のイベントに。8月以降の相場が堅調に推移し買い持ち高を増やした投資家が多いと予想されるほか、3連休も控え週後半に掛けては持ち高解消のために荒い展開を見せる可能性もある。
底打ち反転のシグナルが点っているため基本は強気を維持するところだが、テクニカル的にはまずは上昇してくる5日線(5日現在4万2406円)に対してどう動くか、下は25日線(同・4万2320円)がサポートするか。両線を割り込んでくると再反落の心配が出てくるが、来週の日経平均の予想レンジは4万2500~4万3500円とする。
■来週の主な予定
08日(月)【国内】4-6月期GDP確定値(8:50)
8月景気ウォッチャー調査(14:00)
【海外】中国8月貿易収支
09日(火)【国内】8月マネーストック(8:50)
【海外】米アップルが特別イベント(日本時間10日2時)
国連総会開会(一般討論演説は9/23から)
10日(水)【海外】中国8月生産者・消費者物価指数
米8月生産者物価指数PPI、米原油在庫
11日(木)【国内】7-9月期法人企業景気予測調査
8月国内企業物価指数(8:50)
【海外】ECB定例理事会、ラガルド総裁会見
米8月消費者物価指数CPI(21:30)
前週分新規失業保険申請件数、米8月財政収支(関税含む)
12日(金)【国内】メジャーSQ
7月鉱工業生産確報値・設備稼働率(13:30)
【海外】米9月ミシガン大学消費者信頼感指数(23:00)
(2025年8月30日)
米国の経済指標と国内政局を睨んだ展開か
■今週の日経平均は先週末のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演を受けたNY株高で買い先行のスタートとなった。しかし、期待したほどのサプライズ反応とはならず、4万3201円(前週末比568円高)を高値に失速。一方、米エヌビディアの25年5-7月期決算も売上高が市場予想を上回ったものの8-10月の見通しが一部のアナリスト予想に届かず、時間外取引で株価は一旦下落。日本株のポジティブ材料とはならなかった。
NY株市場は9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ観測でしっかりした動きを続けている。ただ、相場的には織り込んできており、むしろトランプ大統領が利下げに慎重なクック理事の解任に踏みきるなど、心配されたトランプ政権とFRBの対立が激化している。FRBの独立性が瓦解する事態となれば金融市場の安定は失われかねないため投資家が米国から投資資金を引き揚げるリスクが意識される。注目されていた米半導体大手エヌビディアの決算も良かったものの、株価的には出尽くし的ムードとなっている。
来週は、5日の「8月米雇用統計」の発表に向けて3日の「7月JOLTS求人件数」、4日の「8月ADP雇用統計」と米労働指標の統計に関心が向かう。17日に最終日となるFOMCでの利下げ判断に雇用関係の統計が大きく影響するだけに、その数値次第で利下げ期待が継続するか注目される。前回の発表では市場予想を大幅に下回り、過去2か月分も下方修正された「雇用統計ショック」が生じて混乱が生じた経緯がある。現状で8月米雇用統計における非農業部門雇用者数は8万人増加と前回の7万3000人増加からアップの予想。
一方国内では、石破首相の去就を巡って国内政局が株式市場を揺らす可能性がある。自民党は2日に両院議員総会を開く。どうなるか分からないが、総裁選前倒しが濃厚となった場合、市場は候補者が財政拡張派なのか、財政健全化派なのかを見極めながら動くことになる。
尚、29日のNYは前日比92ドル安の4万5544.8ドル、ナスダック総合指数も同249.6ポイント安の2万1455.5ポイントと共に4日ぶりに反落。そして、夜間取引の日経先物は大証終値比590円安の4万2100円と一段安に売られており、週明けは売り先行の始まりが予想される。
来週は新しい月に入るため投資信託の資金なども入りやすく下がる場面は買い需要もありそうだが、まずは25日線(29日現在・4万2033円)が位置してくる4万2000円前後がサポートするか。来週の日経平均は米国の経済指標や国内政治を睨んだ神経質な展開が想定されるが、日経平均の予想レンジは4万2000円~4万3500円を想定。
■来週の主な予定
1日(月)【国内】4-6月期法人企業統計
【海外】米レーバーデーで米国市場休場
中国8月S&P製造業PMI(10:45)
2日(火)【国内】8月マネタリーベース(8:50)
ファーストリテイリングが8月月次売上高
自民党が両院議員総会
【海外】米8月ISM製造業景況指数
3日(水)【海外】米7月JOLTS求人件数、同製造業新規受注・耐久財受注
ベージュブック(米地区連銀経済報告)
4日(木)【国内】日経平均定期入替発表の可能性
【海外】米8月ADP雇用統計、米8月貿易収支
米前週分新規失業保険申請件数
米8月ISM非製造業景況指数
5日(金)【国内】7月毎月勤労統計調査、7月全世帯家計調査(8:30)
7月景気動向指数
名証IR EXPO(6日まで)
【海外】米8月雇用統計(21:30)
(2025年8月24日)
次はエヌビディアの決算が注目材料
■「ジャクソンホール会議」を控えた先週の株式市場は利益確定売りに押される展開となった。そのジャクソンホール会議で22日に行われた講演で、パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は労働市場の減速よりもインフレリスクを重視する姿勢を示し、市場に利下げ期待が広がった。講演前には利下げに慎重になるとの懸念が高まっていただけにサプライズ的な反応となり、22日のNYダウは前日比846.2ドル高の4万5631.7ドルと大幅に反発し8カ月半ぶりに最高値を更新。ナスダック総合指数も同396.2ポイント高の2万1496.5ポイントと4日ぶりに大幅反発。夜間取引の日経先物も大証終値比380円高の4万2950円。一方、NY円相場は日米金利差の縮小から前日比1円50銭の円高・ドル安の1ドル=146円85〜95銭と円高が進行。
週明けの東京株式市場は買い先行のスタートが予想されるが、次は半導体最大手のエヌビディアの2026年2月期(5-7月)決算が関心を集める最大のイベントとなる。日本時間28日午前5時20分発表で、売上高は前年同期比53%増、調整後1株利益は48.5%増がコンセンサス予想。増収率は6四半期連続で伸びは縮小するが、1株利益の伸びは2四半期ぶりに増加に転じる見込み。また、6時からは説明会を実施し、8-10月期の見通しが注目される。7月に中国向け半導体の輸出規制を巡る不安が解消された一方で、中国政府による規制も報じられていたが、ジャクソンホール会議に続きエヌビディアの決算もポジティブとなれば日経平均は再び最高値に向けた流れが意識されそうだ。
ただ、高値警戒がある中では、上昇の勢いが直近の高値まで続かなければ、イベント通過に伴う出尽くし材料となるリスクもある。何よりもFRBがトランプ大統領に屈して独立性を失ったとみなされるムードとなれば、米株・米ドル・米債の「トリプル安」の悪夢も復活しかねない。いずれにしろ、今回のパウエルFRB議長のスタンス変化で、投資判断はむしろ難しくなるかもしれない。
この他、国内では、2つの指数イベントがあることもポイント。27日のMSCI日本指数四半期リバランス実施(川崎重工業と良品計画が新規採用)と、29日のJPX日経インデックス400・JPX日経中小型株指数構成銘柄の入替実施日で、指数のかく乱要因として働く可能性があることにも注意が必要。また、27日には8月末権利付き最終売買日が到来する。株式分割では、コンヴァノ<6574>の1対10のほか、ツルハホールディングス<3391>1対5、パルグループホールディングス<2726>とイオン<8267>1対3、良品計画<7453>、霞ヶ関キャピタル<3498>1対2などがある。尚、翌週9月1日の米国市場はレバーデーの休場で3連休となる。
日経平均の25日騰落レシオも151.7%と「買われすぎ」の水準にあり、荒い株価の値動きに身構えておくことも必要となりそう。今週の日経平均は4万2500円~4万4000円と荒れることも想定したレンジでみておきたい。
■今週の主な予定
25日(月)【海外】米7月新築住宅販売件数
26日(火)【国内】7月企業向けサービス価格指数
【海外】米7月耐久財受注、8月CB消費者信頼感指数
米6月S&PコアロジックCS住宅価格指数
米8月リッチモンド連銀製造業指数
27日(水)【国内】MSCI日本指数四半期リバランス実施日(川崎重工業と良品計画が新規採用)
8月末権利付き最終売買日
【海外】米エヌビディア決算発表、米原油在庫(23:30)
28日(木)【国内】8月末権利落ち日、東京おもちゃショー(31日まで)
【海外】米4-6月期実質GDP改定値
米前週分新規失業保険申請件数
29日(金)【国内】7月失業率・有効求人倍率(8:30)、月鉱工業生産速報(8:50)
7月商業動態統計(8:50)、8月消費動向調査
JPX日経インデックス400・JPX日経中小型株指数構成銘柄入替実施日
【海外】米7月個人消費支出PCE物価指数
米8月シカゴ購買部協会景気指数
米8月ミシガン大学消費者信頼感指数確報
(2025年8月16日)
ジャクソンホール会議へ向け神経質な展開か
■今週の日経平均は先週の地合を継続する快進撃を見せた。「持たざるリスク」というのか。まさに「買うから上がる、上がるから買う」といった展開で、昨年7月11日の史上最高値4万2426円をあっさりと抜き、13日に一時4万3451円(前週末比1631円高)まで値上がりした。14日は前日比625円安と反落したものの、翌15日にはすかさず切り返し週末終値も4万3378円と高値を維持。トランプ関税や円安一服を背景に日本企業の業績は減益に転じているものの、世界的なリスクオンの動きから理屈抜きの上げ相場に入っている。
こうした中、今週は日米の金融政策をめぐる思惑が交錯した。ベッセント米財務長官が9月FOMCでの0.5%(通常の2回分)の大幅な政策金利の引き下げが望ましいとする「私見」を述べ、CPI(消費者物価指数)の落ち着きや雇用統計の下方修正により高まっていた9月の利下げ観測がベッセント長官の発言で補強される格好となった。しかし、14日に出た7月PPI(卸売物価指数)の上昇率は市場予想を大きく上回り、トランプ関税による物価高と景気後退が同時進行する不安も拭いきれていない。
そうした意味で、21~23日に米ワイオミング州で行われる「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言に市場の関心が集まっている。パウエルFRB議長が利下げに前向きなメッセージを出せば株式市場にプラスと見られている。ただ、米国のインフレが収まったとはまだ言い難く、怖いのはFRBがトランプ大統領に屈して独立性を失ったと投資家がみなすムードとなれば、米株・米ドル・米債の「トリプル安」の悪夢も復活しかねない。
いずれにしろ、お盆休み明けの来週の株式市場はジャクソンホール会議を前にした神経質な展開が予想される。テクニカル的にも相場の先高観測は高まっているが、目先的には、直近の急騰による利益確定売りと押し目買いが交錯する展開が予想される。ポイントは5日線(15日現在4万2767円)に対してどう動くか。5日線がサポートしている間はこれまでの買いが買いを呼ぶ展開となりやすく下手な弱気は禁物だ。反対に5日線を割り込んで来ると騰勢一服感から25日線(同4万0907円)が下値として意識されてくる。来週の日経平均は4万1000円~4万4000円とボラタイルなレンジを予想。
8月第3週(8月18日~8月22日)は、日米共に市場に影響が大きい経済・労働統計の発表は見当たらない。最も注目されるのは21日に開幕する経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」だ。相場への影響は限定的ながら、20日に日本政府観光局から発表される7月の訪日外客数も注目される。6月は前年同月比7.6%増で6月として過去最高を記録。猛暑の中で7月は、大阪万博、日本三大祭りのうちの京都・祇園祭と大阪・天神祭、各地の花火大会、富士山登山などが人気を集めた可能性がある。
■来週の主な予定
18日(月)【国内】6月第三次産業活動指数(13:30)
パン・パシフィック・インターナショナルHDが決算発表
【海外】米8月NY連銀リーダーズサーベイ
19日(火)【海外】米7月住宅着工件数、米ホームデポが決算発表
20日(水)【国内】7月貿易統計、6月機械受注(8:50)
7月訪日外客数(16:15)
第9回アフリカ開発会議(横浜市、22日まで)
【海外】7月29日、30日開催のFOMC議事録、米原油在庫
21日(木)【海外】ユーロ圏8月製造業・非製造業PMI購買担当者景気指数
米8月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数
米7月S&Pグローバル米国製造業PMI
米前週分新規失業保険申請件数、米7月中古住宅販売件数
米ウォルマートが決算発表
経済シンポジウム(ジャクソンホール会議。23日まで)
22日(金)【国内】7月全国消費者物価指数CPI(8:30)
(2025年8月9日)
TOPIXに続き日経平均も史上最高値更新が意識されるが・・・
■「令和のブラックマンデー」と言われた昨年8月初旬の記憶もよぎるムードで始まった今週の日経平均は月曜日に前週末比949円安となる3万9850円まで売られた。しかし、その後は押し目を拾う動きからすかさず反発。そして、またもや弱気筋を踏ませる格好で8日に一時7月24日の年初来高値4万2065円に肉薄する4万2033円まで急伸。直前のFOMC(米連邦公開市場委員会)でしぼんでいた政策金利の早期引き下げ観測が再び強まったことや、米国相互関税の負担軽減措置巡り、米国側が大統領令の修正を約束したことを好感した形だが、8日の上昇は、想定できない強い動きだったと言えるだろう。
先週末のNY株安に、決算発表も関税や円高が逆風になった厳しい発表が目立ち、半導体への新たなトランプ関税も表明された。しかし、そうした複数の悪材料もはね返し日経平均は4日安値ザラ場3万9850円から8日ザラ場高値4万2033円まで2183円の大幅な上昇を見せ、株式市場は新たな上昇ステージに入った感が出ている。ちなみに、日経平均は一歩及ばなかったが、TOPIXは史上初の3000ポイント台に乗せ昨年7月11日の史上最高値2946ポイントを更新。
こうした中、8日のNYダウは前日比206.9ドル高の4万4175.6ドルと反発、ナスダック総合指数も同207.3ポイント高の2万1450ポイントと3日続伸。米連邦準備理事会(FRB)が次回9月の会合で利下げをするとの見方が継続した他、ウクライナの停戦を巡る米国とロシアの協議が進展するとの期待も相場を支えた。そして、夜間取引の日経先物は大証終値比470円高の4万2290円と7月24日の年高値4万2065円を抜き、昨年7月11日の史上最高値4万2426円77銭を射程圏に捉えている。
来週の日経平均は史上最高値更新を意識した値動きが想定される。ただ、8月相場は夏枯れになりやすく、特にお盆休みともなる来週は市場参加者が減ることが想定される。昨年の「山の日」による三連休を通過した後の日経平均は5連騰、一方、2年前は週間で大幅安と薄商いの中で株価は上下に大きく振れている。25日騰落レシオも8日時点で146.8%と過熱しており、来週の日経平均は4万1000~4万2500円とやや慎重なレンジを想定。
タイムスケジュールでは、8月第2週は、9月16日、17日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ実施を占う重要指標となる「米7月消費者物価指数CPI」が12日、「米7月小売売上高」が15日にそれぞれ発表される。食品・エネルギーを除くコア消費者物価指数CPIは前年同月比3%増と前回の2.9%から小幅上昇の市場予想。小売売上高は前月比0.5%増と前回の0.6%増からやや減速する市場予想となっている。来週の米国市場はこうした経済統計をにらんだ展開となる。
■来週の主な予定
11日(月)【国内】山の日で東京市場休場
12日(火)【国内】横浜ゴム、カバー、GMOインター、フラーが決算発表
【海外】米7月消費者物価指数CPI(21:30)
米7月財政収支(関税収入含む)
13日(水)【国内】7月国内企業物価指数(8:50)
アクセルスペースホールディングスがグロースにIPO
【海外】米原油在庫(23:30)
14日(木)【国内】すかいらーく、SOMPO、電通が決算発表、決算発表一巡
【海外】米7月生産者物価指数PPI、米前週分新規失業保険申請件数
米アプライド・マテリアルズが決算発表
15日(金)【国内】4-6月期GDP速報(8:50)
6月鉱工業生産確報値(13:30)
【海外】中国7月小売売上高・鉱工業生産指数(11:00)
米7月小売売上高(21:30)、米8月NY連銀製造業景気指数
米8月ミシガン大学消費者信頼感指数
(2025年8月2日)
東京エレクが業績相場に冷や水、さらに円高反転で暗雲が・・・
■今週の日経平均は前週末比657円安。前週の大幅高の反動で軟調な展開が続いたが、日経平均に寄与度の大きい東京エレクトロンが業績予想の下方修正を受け急落したことが日経平均の足を引張ったこともあり24日高値4万2065円からの実質的な調整幅はまだ限定的といえる。海外勢の買い意欲が根強いほか、蓄積したショートポジションが需給を緩みにくくさせていると見られている。
30日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では予想通り政策金利を据え置くことを決定し早期利下げへの期待が後退。一方、利上げを視野に入れる日銀の植田和男総裁は追加利上げを急がない姿勢を示し、円相場は1ドル=150円台と約4カ月ぶりの円安水準に進んだ。しかし、現地1日発表の7月の米雇用統計が労働市場の軟化を示したことで米長期金利が低下、NY円相場は1ドル=147円35〜45銭と3円幅以上の円高に振れている。ちなみに、1日のNYダウは前日比542.4ドル安の4万3588.5ドルと5日続落。ナスダック総合指数も同472.3ポイント安の2万0650.1ポイントと大幅続落。そして夜間取引の日経先物は大証終値比960円安の3万9900円と一段安に売られている。
波乱の週明け相場が予想されるが、来週は決算発表が後半のヤマ場を迎える。1日は業績見通しを下方修正した東京エレクトロンが急落し市場に冷や水を浴びせたが、ここまでの決算発表では業績見通しが振るわず株価が下落するケースが目に付く。これにNYでの急激な円高反転で、この先の決算発表でも下振れリスクへの警戒が一層高まりそうだ。最大の焦点は7日に開示するトヨタ自動車7203だが、トランプ関税については暫定的に4~5月分の影響しか織り込んでいない。関税率の引き下げを受けてどう見直してくるかが注目される。
この他では、8日には自民党の両院議員総会が開かれる。石破茂首相の退陣を求める声が強まるかが焦点となるが、こちらは首相退陣の場合、「後任が誰になるとしても石破首相より財政拡張的になると見込まれ、退陣の思惑が高まるようなら株高が促される」との見方だ。
業績相場期待に暗雲が垂れ込めてきた決算発表に、国内政局。加えて8日はオプションSQ(特別清算指数)の算出も控える。まずは週初に予想される波乱の落ち着きどころを待つところだが、来週の日経平均の予想レンジは3万9800円~4万1200円と上下に振れる展開か。
■来週の主な予定
4日(月)【国内】ファーストリテイリング7月国内売上高
三菱商事、ローム、川崎汽船が決算発表
【海外】米6月製造業新規受注・耐久材受注
5日(火)【国内】6月16日、17日開催の日銀金融政策決定会合議事要旨
三菱重工、メルカリ、日本郵船が決算発表
【海外】米6月貿易収支、米7月ISM非製造業景況指数
米キャタピラー、アムジェン、ファイザーが決算発表
6日(水)【国内】6月毎月勤労統計(8:30)
鹿島、川崎重工、IHI、ホンダ、NTTが決算発表
【海外】米原油在庫
米ウォルト・ディズニー、マクドナルドが決算発表
7日(木)【国内】6月景気先行指数速報(14:00)
トヨタ、ソニー、古河電工、フジクラ、ソフトバンクGが決算発表
JPX日経インデックス400、JPX中小型定期銘柄入替発表
【海外】中国7月貿易収支
米新規失業保険申請件数、米6月消費者信用残高
8日(金)【国内】オプションSQ
7月30日、31日開催の日銀金融政策決定会合の「主な意見」
7月景気ウォッチャー調査(14:00)
三越伊勢丹、楽天、日本郵政、サンリオが決算発表
(2025年7月25日)
普通に考えれば調整含みの展開が見込まれるが・・・
■今週のこの急騰劇を想定した人は恐らく皆無だろう。むしろ、下ブレを警戒して下げに備えたポジションを組んでいた市場参加者が多かったのではないか。こうした中、23日朝に飛び込んできたトランプ米大統領が、日本との関税交渉で15%の課税で合意したとするニュースがビッグサプライズとなり、まさに買うから上がる、上がるからから買うと言ったショートカバーを巻き込んだ買いがスパイラル的に入り大幅高。24日には一時前週末比2246円高となる4万2065円まで買われ、昨年7月11日に付けたバブル崩壊後の高値4万2416円に迫った。その後は、さすがに上げ幅を縮小したが下げは浅く強い動きを継続。尚、OPIXは昨年7月に付けた史上最高値2946ポイントを大きく更新した。
急ピッチで大幅な上昇に対する警戒感が強まっている中、来週は日米金融イベントを控えるウイークとなる。30日のFOMC(米連邦公開市場委員会)、31日の日銀金融政策決定会合ともに政策金利は据え置かれる見込みだが、米国は年内の利下げのタイミングと回数、国内では利上げの時期を読むイベントとなりそう。日米関税協議の合意で一米共に金融政策に対する懸念の一つが晴れ、8月1日のEU(欧州連合)に対する30%の関税措置期限では日本と同水準の15%に引き下げられるとの観測もあり、合意に達すればNYダウの2024年12月最高値を終値ベースでも更新してくる期待が膨らむ。米国では1日の7月雇用統計も焦点の一つ。非農業部門の雇用者数は6月の14万7000人増から7月は12万人増に減少の事前予想だ。
これ以外では相場への影響が大きい企業決算が焦点となる。米国では30日にメタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、31日にアップルとビックテックの決算発表を控える。国内では29日のアドバンテスト6857、NEC6701、30日の富士通6702、村田製作所6981、31日の日立製作所6501、東京エレクトロン8035、1日の任天堂7974が焦点。この他では、28日に自民党が衆参両院議員懇談会を開催するが辞任報道を否定し続投姿勢を示す石破首相の動向も不透明要因だ。石破首相が辞任となっても次は誰になるのか。財政拡張派の高市氏か、林官房長官、小泉農相といった緊縮色の強い人になるか。現段階でいずれのシナリオにも絞り込むことはできないが、それによっても市場の思惑は違ってくる。
普通に考えれば調整含みの展開が見込まれるが、弱気筋を退場させるような動きともなっているためショートカバーを巻き込んだ理屈抜きの上げも有り得る。いずれにしろボラタイルな展開となっており、来週の日経平均は上も下も大きく4万0500円~4万2500円の広いレンジで見ておきたおい。
■来週の主な予定
28日(月)【国内】さくらインターネット、日東電工が決算発表
自民党が衆参両院議員懇談会
29日(火)【国内】山忠が名証メインにIPO、公開価格は2600円
コマツ、NEC、アドバンテスト、キーエンスが決算発表
【海外】FOMC初日、米6月JOLTS求人件数
米5月S&Pケースシラー住宅価格指数
米7月コンファレンスボード消費者信頼感指数
ボーイング、メルク、P&Gが決算発表
30日(水)【国内】日銀金融政策決定会合初日
日産自動車、富士通、村田製作所、日本航空、OLC、パナソニックHDが決算発表
7月末権利落ち日
【海外】ユーロ圏4-6月期GDP(18:00)
FOMC最終日、パウエルFRB議長会見
米7月ADP雇用統計、米4-6月期GDP
メタ、マイクロソフト、クアルコムが決算発表
31日(木)【国内】日銀金融政策決定会合最終日、植田日銀総裁会見
日銀「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)
6月鉱工業生産速報、同商業動態統計(8:50)
7月消費動向調査 (14:00)
商船三井、日立、東京エレク、三井住友FGが決算発表
【海外】中国7月製造業・非製造業PMI(10:30)
米6月個人所得・個人支出PCE、
米前週分新規失業保険申請件数
シカゴ購買部協会景気指数
アップルが決算発表
01日(金)【国内】6月完全失業率・有効求人倍率(8:30)
丸紅、日本製鉄、TDK、イビデン、任天堂が決算発表
【海外】ユーロ圏7月消費者物価指数(18:00)
米7月雇用統計(21:30)、米7月ISM製造業景気指数
米7月ミシガン大学消費者信頼感指数確報
(2025年7月18日)
選挙結果待ちだが、反乱があっても一時的か?
■今週の日経平均は軟調な動きも見せたものの上昇してきている25日線(39404円)がサポートする格好で反発。そして18日には4万円の大台に乗せる場面もあった。4万円には阻まれているもものの底堅さを見せている。
3連休明けの相場は20日投開票の参議院選の結果による政局動向が相場の最大の関心事となる。仮に参院選で自公が大敗し、野党が結束しての内閣不信任案提出に関する発言などがあれば、立民主導の政権交代を視野に週明けの相場は急落することも予想される。ただ、与党の過半数割れを見通す国内メディアの情勢報道が相次いでおり、市場は与党過半数割れも織り込んできている。そもそも市場は石破政権を歓迎していなかったこともあり、自公が大敗というほどではない負け方をして石破首相が辞任。新総裁に高市前経済安保相や小林元経済安保相が選ばれる首相交代が最良シナリオとする向きもある。選挙結果が相場にどういう影響を与えるかはフタを開けて見なければ分からないが、波乱があっても一時的な動きで済む可能性が高い。来週の日経平均は3万9000円~4万0200円の範囲を予想。
極端な政局不安が現実味を帯びない限り、関心は決算や日米貿易交渉、米国の金融政策などに向くと考えられるが、経済指標では、最終週に控えた30日のFOMC(米連邦公開市場委員会)とパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見、1日の米7月雇用統計に関心が向くことになる。国内も31日の日銀金融政策決定会合最終日、植田日銀総裁会見をにらむ展開となる。
この他では、日米ともに決算発表が注目スケジュールとなる。米国では22日のアルファベット、23日のテスラが注目される。国内では24日の信越化学、キヤノン、25日のファナックに関心が向かう。
■来週の主な予定
21日(月)【国内】「海の日」の祝日で東京市場休場
【海外】米ベライゾンが決算発表
22日(火)【海外】米7月リッチモンド連銀製造業指数
米アルファベット、テキサス・インストルメンツが決算発表
23日(水)【国内】日本航空電子、オービック、信越ポリマーが決算発表
【海外】米6月中古住宅販売件数、米原油在庫
米IBM、テスラが決算発表
24日(木)【国内】フラーが東証グロースにIPO
信越化学工業、キヤノン、中外製薬が決算発表
ニデックは4-6月決算速報値を発表。当日説明会開催
【海外】米7月S&Pグローバル米国製造業PMI
米前週分新規失業保険申請件数、米6月新築住宅販売件数
米ダウ、ハネウェルが決算発表
25日(金)【国内】7月東京都区部消費者物価指数(8:30)
ルネサスエレク、ファナック、SCREENが決算発表
大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」開業
【海外】米6月耐久財受注
(2025年7月12日)
難航している関税交渉や与党劣勢が伝わっている参院選を前に様子見か?
■今週は日経平均とTOPIXをベンチマークにするETF絡みの1.5兆円程度の分配金ねん出売りが出たものとみられる。しかし、こうした売り圧力を受けながらも大きくは崩れない底堅さを見せている。11日の日経平均終値は3万9569円と前週末比241円安となったが、これはファーストリテイリングで11日の日経平均を262円押し下げておりこれがなければプラス。今週はエヌビディアの時価総額が世界で初めて4兆ドル(約585兆円)に乗せたことが話題となったが、人工知能(AI)関連の収益成長が期待されるハイテク株に買いが入り相場を下支えしている。また、米相互関税の停止期限が8月1日まで延長されたことも安心材料となった。
こうした中、来週(14日から18日)は、米国で相場に影響を与える主要経済指標の発表が集中する。9日に発表された6月17日、18日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨では、7月に利下げ可能との認識を示したのは参加者19人中2人にとどっまた。米関税措置の影響は一時的もしくは小幅と見込むも物価などへの影響を懸念していることから15日発表の「米6月消費者物価指数CPI」と16日の「米6月生産者物価指数PPI」、17日発表の「米6月小売売上高」に関心が向くことになる。また、ゴールドマンやJPモルガンは好業績期待が先行しているが、15日の金融株を皮切りに米国企業の決算シーズンがスタートすることもポイント。
一方、国内では20日投開票の参議院選が最大のイベント。与党の劣勢も伝わっているが、与党が過半数を確保できない場合、政局が一時的に混乱する可能性が高く日米関税交渉にも影響が及ぶ。3連休の中日の投票だけに、週末にかけては売買手控えムードが強まる可能性が高い。その3連休中の19日にはベッセント財務長官が来日、関税交渉があるかにも関心が高まる。
底堅い動きをみせているものの、こうしたイベントを控え来週も積極的な買いは入りづらそう。チャートは上昇してきている25日線(11日現在・3万9092円)も意識される形となっているが、来週の日経平均は3万9000円~4万0300円のレンジを予想。市場エネルギーが減退傾向となりやすい中、指数が上下にブレやすくなることには注意したい。
■来週の主な予定
14日(月)【国内】5月機械受注(8:50)
5月第三次産業活動指数、5月鉱工業生産確報(13:30)
【海外】中国6月貿易収支
15日(火)【海外】中国4-6月期GDP、同6月小売売上高(11:00)
米6月消費者物価指数CPI、米7月NY連銀製造業景気指数
米JPモルガン決算発表、米決算シーズン開始
16日(水)【国内】6月訪日外客数、芥川・直木賞発表
【海外】米6月生産者物価指数PPI、米地区連銀景況報告
米6月鉱工業生産・設備稼働率、米原油在庫
米ゴールドマン・サックス決算発表
17日(木)【国内】6月貿易統計(8:50)、6月首都圏新規マンション発売
【海外】米6月小売売上高、同6月輸出入物価
米7月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数
米前週分新規失業保険申請件数、米7月NAHB住宅指数
G20財務相・中央銀行総裁会議(南ア・18日まで)
18日(金)【国内】6月全国消費者物価指数CPI(8:30)
みのやが東証スタンダードにIPO
【海外】米6月住宅着工件数、米7月ミシガン大学消費者マインド指数速報
19日(土)【国内】ベッセント米財務長官来日
20日(日)【国内】参議院選投開票
(2025年7月5日)
ETFの分配金捻出売りや、日米関税交渉の結果次第で荒い動きか
■今週の日経平均は前週までの強さを引き継ぎ6月30日に4万0852円まで買われ4万1000円台回復も意識された。しかし、23日終値から5日で約2500円もの大幅上昇でさすがに短期的な過熱感から反落。トランプ米大統領が貿易交渉中の日本に対し30%か35%の関税を課すべきと主張したこともあり、7月2日に一時3万9444円まで売られる場面もあった。しかし、その後は下げ幅を縮小。1丁目1番地である日米関税交渉が暗礁に乗り上げたにも関わらず大きな下げには至らない「不思議な強さ」も見せている。もっとも、週末は反発したものの、フシ目の4万円や5日線(4日現在3万9966円)に戻りを止められ現状は下げ途中の動き。
来週は各スケジュール面から相場の暗転が意識されている。9日と11日にはこれまで述べている約1.5兆円規模と推定されるETF(上場投資信託)の分配金支給日の支払金捻出のための売りが懸念され、9日には米政府による日本への相互関税上乗せ90日間停止期限を迎える。日本には30%から35%の課税が事前観測として報じられている。NTTによるNTTデータTOBに伴うTOB参加資金の市場への還流や配当金再投資のシーズンを終え好需給も終了。また、3月期企業の決算シーズンの「露払い」役として注目される安川電機6506が4日大引け後の決算発表で通期業績予想を「米国の関税政策の影響により需要の先行きに不透明感が高まった」として、下方修正したことも地合いを悪化させる材料となりそうだ。そして11日にはオプションSQ(特別清算指数)も控える。
こうしたことに加え、日経平均が心理的節目である4万円大台を回復した目標達成感も加わり、目先は相場の下落を警戒する向きも多い。ただ、これらの波乱要因を前に買い控えやカラ売り、先物売りなどの売りポジションも少なからず入っているものと思われる。日米の関税交渉に関してもベセント米財務長官が3日、「日本は参院選を控えているため合意をまとめるには国内の制約が多い」と述べていることもあり、市場では最終的には協議継続のために期限が延長されるとの見方もある。つまり、これらのイベントを受けても相場が下落しなければ逆に売り方のショートカバーを巻き込んだ反転相場も十分想定されるところだ。
いずれにしろ、来週はETFの分配金捻出に伴う換金売りや、日米関税交渉の結果次第で上にも下にも振れやすい展開が想定され、来週の日経平均は3万9000~4万1000円と広いレンジでの値動きを想定。
■来週の主な予定
07日(月)【国内】5月毎月勤労統計調査(8:30)、5月景気動向指数(14:00)
08日(火)【国内】6月景気ウォッチャー調査
【海外】米5月消費者信用残高
09日(水)【国内】6月マネーストック
米政府による日本への相互関税上乗せ90日間停止期限
【海外】中国6月生産者物価・消費者物価指数(10:30)
6月17日、18日開催のFOMC議事録
10日(木)【国内】6月国内企業物価指数
セブン&アイHD、ファーストリテイリングが決算発表
【海外】前週分新規失業保険申請件数
11日(金)【国内】オプションSQ
【海外】米6月財政収支
(2025年6月28日)
4万1000円乗せも視野に入っているが、需給の悪化懸念も。
■今週の初めに日経平均が4万円台に乗せて終わると予想した人はいるだろうか?恐らくいないだろう。今週の日経平均は米国の軍事介入による中東情勢の悪化が警戒され一時3万8026円まで売られた。しかし、フシ目の3万8000円がサポートする格好で切り返し23日終値は前週末比49円安の3万8354円と小幅安に留まった。そして翌24日早朝のニュースでまさかのイスラエルとイランの停戦合意報道。中東リスクの拡大懸念で売った向きの買い戻しも原動力となり怒濤の反撃。さらに、ボウマンFRB副議長の発言をきっかけに早期の政策金利の引き下げ期待が浮上したほか、半導体大手エヌビディアが主導するAI相場復活で日米のハイテク株相場をけん引。抵抗が予想された3万9000円のフシもあっさりと突破し27日終値は4万0150円。24日から僅か4日間で1796円幅となる大幅上昇となり一気に終値ベースの年初来高値を更新した。
さらに、27日のNYダウは前日比432.4ドル高の4万3819.2ドル続伸。この日発表の米経済指標がインフレ圧力の鈍化を示す内容だったことで、米連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げするとの見方が改めて意識され相場を押し上げた。また、ベッセント米財務長官が相互関税の上乗せ部分の猶予期間を7月上旬から「レーバーデー(9月1日)まで延長する可能性をにじませたことも買いを後押しした。ナスダック総合指数も同105.5ポイント高の2万0273.4ポイントと5日続伸し、2024年12月に付けた最高値(2万0173)を更新。多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数も同32.05ポイント高の6173.07ポイントと2月19日に付けた最高値(6144.15)を更新。夜間取引の日経先物も大証終値比400円高の4万0580円と一段高に進んでいる。
今週のこの上げを予想した市場関係者は皆無といっていいだろう。そうした中での踏み上げ相場。また、米国の利下げ期待や、日経平均に影響力の大きいAI関連銘柄の復活もあり、買いが買いを呼ぶ展開で4万1000円乗せも意識される状況となっている。
しかし、急ピッチな相場上昇で過熱感はかなりヒートアップしている。また、前回「7月上旬までは好需給が期待されるが、7月3日を境に暗転する可能性もある」としたが、7月上旬には指数連動型ETFの分配金をねん出する売り需要が見込まれる。2019年以降の7月のETF決算日には高確率で日経平均が値下がりしているが、今年は現物・先物で計1.5兆円と過去最大規模の売り需要になるとみられるだけに注意が必要だろう。直近の買い需要となっている配当支払い後の再投資の一巡もあり、需給の悪化が懸念される。
いずれにしろ来週の日経平均は乱高下も予想され、3万9000~4万1000円のボラタイルなレンジを予想する。
■来週の主な予定
30日(月)【国内】5月鉱工業生産速報値(8:50)
レント<372A>がスタンダード、リップス<373A>がグロースにIPO
【海外】中国6月製造業PMI、同非製造業PMI(10:30)
米6月シカゴ購買部協会景気指数
01日(火)【国内】6月調査日銀短観(8:50)、6月消費動向調査(14:00)
【海外】中国6月Caixin製造業PMI(10:45)
米6月ISM製造業景況指数、米5月JOLTS求人件数
02日(水)【国内】6月マネタリーベース (8:50)
ファーストリテイリング<9983>が6月国内ユニクロ売上高
【海外】米6月ADP雇用統計
03日(木)【海外】米5月貿易収支、米6月雇用統計(21:30)
米前週分新規失業保険申請件数
米6月ISM非製造業景況指数
独立記念日の前日で米国市場は短縮取引
04日(金)【国内】5月全世帯家計調査(8:30)
安川電機<6506>が決算発表
ヒット<378A>が東証グロースにIPO
【海外】独立記念日で米国市場休場
(2025年6月22日)
目先は騰勢一服か、引き続き中東リスクが焦点
■先週の日経平均は関門だった3万8500円のフシを突破し4カ月ぶりの高値をつけた。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待が後退し週後半に掛けて反落。3万8500円に続き、3万9000円の壁も意識される絵面となっている。もっとも、中東の地政学リスクの高まりを考えれば底堅く相場の基調は強いと判断できる。
目先の問題は中東情勢。中東情勢をめぐってはイスラエル、イラン両国の紛争に米国が介入姿勢を見せている。米政府は19日、トランプ大統領が今後2週間以内に紛争に介入するかどうかを決定すると発表、トランプ米大統領の今後の発言に注目が集まっている。
今のところ株価に過度に悲観的な動きは出ていないが、トランプ大統領のこれまでの言動からは「ディール(取引)」を基本にしていることは明らかだ。最終的には「譲歩を引き出した」という手柄話にして、今回も瀬戸際で軍事行動は回避されるシナリオを市場は読んでいるのだろう。そうなれば良いが・・・
トランプ氏は強大な軍事力を背景に武力行使と言う脅しをよく使う。しかし、結局は自信のパフォーマンスが目的で、少しでも自分に火の粉が飛んできそうになると武力行使を否定する。結局のところ反撃される可能性が全くないはるかに弱い相手に対してのみ虚勢をはっているのだ。貿易問題でも、身勝手な高関税政策で他国を窮地に追いやりながら、その痛みが少しでも自分に跳ね返ってきそうになると引っ込める朝令暮改を繰り返している。「TACO(トランプはいつもびびって退く)」と言われている所以はこうしたことにある。
強硬な反米・反イスラエル路線を貫き、両国への対決姿勢を鮮明にしてきたイランをみていると、例え国土が焦土と化してもプライドを優先する国のように思えるが、こんな見透かされた「TACO」トランプのディールを果たしてイランが受け入れるだろうか?
欧州各国は事態の収束を働きかけており、どうなるかは分からないが、米国が介入すれば株式市場に「ショック安」がおきてもおかしくない。反対に、事態が収束に向かうようならリスクオンの動きが期待出来る。いずれにしても今週は持ち高を傾けにくい状況が続きそうだ。
テクニカル的には、上値の関門となっていた3万8500円をいったんは突破したことで、今度はこの3万8500円が下値メドとして機能するかが焦点となるが、今週の日経平均は3万8500円を基調の分岐点に3万8000~3万9000円のレンジを予想。
■今週の主な予定
23日(月)【国内】ウェルネス・コミュニケーションズがグロースにIPO
【海外】米6月S&Pグローバル米国製造業PMI
米5月中古住宅販売件数
24日(火)【国内】プリモグローバルホールディングスがスタンダードにIPO
日産自動車、日本製鉄が株主総会
【海外】米1-3月期経常収支、米4月FHFA住宅価格指数
米4月S&Pケースシラー住宅価格指数
米6月コンファレンスボード消費者信頼感指数
25日(水)【国内】6月16日、17日開催の日銀金融政策決定会合の「主な意見」
北里コーポレーションがプライムにIPO
フジメディアホールディングスが株主総会
【海外】米5月新築住宅販売件数、米原油在庫
米マイクロン・テクノロジーが決算発表
26日(木)【国内】6月末権利付き最終売買日
エータイがグロースにIPO
【海外】米1-3月期GDP確定値、米5月耐久財受注
米前週分新規失業保険申請件数
米5月中古住宅販売仮契約
27日(金)【国内】5月失業率・有効求人倍率(8:30)
6月東京都区部消費者物価指数(8:30)
6月末権利落ち日、株主総会集中日
【海外】米5月個人所得・個人支出PCE
米ミシガン大学消費者信頼感指数確報
(2025年6月14日)
中東リスクとFOMCが焦点
■今週の日経平均は買いが先行したものの11日の3万8529円を高値に調整の動きとなり、イスラエルがイランの核施設を攻撃し中東リスクが台頭した13日に一段安に売られた。4月初旬のトランプ関税ショックから順調に立ち直ってきた日経平均は5月中旬以降、3万8500円前後で上昇を阻まれてきた。今回も関門を突破できずに下落に転じた訳だが、チャートは5月13日の戻り高値3万8494円、29日の同3万8454円、そして11日の同3万8529円のトリプルトップとなる高値形成の可能性も示唆している。
中東の大国であるイスラエルとイランの衝突が拡大すると世界経済への影響も侮れない。また、中東の有事は東京株式市場の時間外で生じやすい地理的条件から、相場に過度な影響を与えやすくなる。今後は首都テヘランなどへの攻撃でイラン軍トップの参謀総長や国会議員などが犠牲となったイラン側の出方が焦点となる。ちなみに、昨年10月のイスラエルによるイランへの攻撃時にはイランの報復が限定的にとどまり短期で終結したが、当時の米国はバイデン政権で、今回は少々、頭のいかれたトランプ政権という違いがある。楽観は禁物か?
情勢が激化し中東の地政学リスクが一段と高まることには注意が必要だが、同時に米国の金融政策の先行きも相場にとっては重要だ。そうした面で来週はFOMC(米連邦公開市場委員会)が目玉のイベントとなる。利下げに慎重なFRB(米連邦準備制度理事会)のスタンスに変化が出るかが注目されるが、年内の利下げ観測が高まれば市場のリスク許容度の拡大が期待される。逆に慎重姿勢を崩さない場合は株価も上値の重さが拭えない動きとなりそう。尚、トランプ関税については「TACO(トランプはいつもびびって退く)」と楽観ムードが生まれており、市場は過剰に反応しなくなっている。
相互関税に関する日米交渉の行方が意識される中、中東情勢の緊迫化による警戒感も重なり来週の東京株式市場は波乱含みの展開が想定されている。ただ、日経平均は3万8000円を超えると上値が重い印象がある一方で、下値も底堅い印象が強くなっている。実際、中東情勢の緊迫化を受け13日のNYダウは前日比769.8ドル安の4万2197.7ドル、ナスダック総合指数も同255.6ポイント安の1万9406.8ポイントと共に大幅反落となったが、夜間取引の日経先物は大証終値比180円高の3万7960円と反発。NY円相場も1ドル=144円05〜15銭と13日の東京市場より円安に振れており冷静さを取り戻している。
目先は売りが買いに勝る展開が想定されるが、基本は下値に対する抵抗力を試す動きとなりそう。テクニカル面では、上昇してきている25日線(13日現在・3万7759円)がサポートするかが第一のポイント。目先では25日線~5日線(同3万8145円)のどちらに抜けてくるかだが、来週の日経平均の予想レンジは3万7300円~3万8300円とする。
■スケジュール面では、15日から始まる主要7カ国首脳会議(G7サミット)、日銀金融政策決定会合とFOMCの日米2大金融イベントが注目材料。また、19日はジューンティーンス(奴隷解放記念日)の祝日で米国市場は休場となる。一方、国内では日銀金融政策決定会合最終日を17日に迎える。政策金利は据え置かれる見込みだが植田日銀総裁の会見内容次第で為替に影響が出ることには留意しておきたい。
そして物色的には「四季報」「225銘柄入れ替え」がイベントとしてある。まず、「会社四季報・夏号」の発売で中小型株にも個別株物色が高まる可能性がある。次に19日にNTTデータ<9613>のTOBが設立し上場廃止が決まると、入れ替わりの新規採用225銘柄が早ければ20日にも発表される。現状ではイビデン<4062>、ローム<6963>、SHIFT<3697>が有力視されている。
■来週の主な予定
16日(月)【国内】日銀金融政策決定会合(17日まで)
【海外】中国5月小売売上高、鉱工業生産指数(11:00)
米6月NY連銀製造業景気指数
17日(火)【国内】日銀金融政策決定会合最終日、植田日銀総裁会見
【海外】FOMC初日(~8日まで)
米5月小売売上高、米5月輸出入物価
米6月NY連銀ビジネスリーダーズサーベイ
米5月鉱工業生産指数・設備稼働率
18日(水)【国内】5月貿易統計、4月機械受注(8:50)
5月の訪日外国人数(16:15)
会社四季報「夏」号発売日
【海外】FOMC最終日、パウエルFRB議長会見(経済見通し発表)
米5月住宅着工件数、米前週分新規失業保険申請件数
19日(木)【国内】NTTによるNTTデータTOB期間終了
(20日or23日に代替225銘柄発表)
【海外】ジューンティーンス(奴隷解放記念日)で米国市場休場
20日(金)【国内】植田日銀総裁が全国信用金庫大会で挨拶
4月30日、5月1日開催の日銀金融政策決定会合議事要旨
5月全国消費者物価指数CPI(8:30)
伊澤タオルが東証スタンダードにIPO
【海外】 米6月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数
(2025年6月7日)
底打ちのシグナルがは点っているが、万8000円から上を積極的に買い上がる動きにはなりにくいか?
■今週はレアアースの輸出規制をめぐって米中間の溝が深まり5日に行われたトランプ米大統領と中国の習近平主席による電話会談でも解決には至らなかった。それでもマーケットが大きく落ち込むことはなく、今週の日経平均の値幅は500円強と狭いレンジのもみ合いに終始した。貿易戦争に関しては、最近話題になっている「TACO」(Trump always chickens out・トランプはいつもびびって退く)の合言葉が浸透。いわゆる、いくら強硬な発言をしても根が臆病ですぐに撤回すると、市場は楽観的に受け止めるようになっている。むしろ市場はトランプ大統領の発言より、米国経済が息切れムードを強めていることに神経をとがらせている。
こうした中、6日発表の5月米雇用統計は労働市場の底堅さを示した。雇用悪化を巡る過度な懸念が後退したことで6日のNYダウは前日比443.1ドル高の4万2762.8ドルと3日ぶりに反発。ナスダック総合指数も同231.5ポイント高の1万9529.9ポイントと反発し2月20日以来、約3カ月半ぶりの高値で終えた。また、多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数も同61.06ポイント高の6000.36ポイントと2月21日以来の高値で終えている。そして夜間取引の日経先物も大証終値比250円高の3万8020円と5日線に200日線も上回り底打ち反転のサインが点っている。NY円相場も1ドル=144円80〜90銭と円安が進行。
週明けは買いが先行する始まりが予想される。ただ、短期(日足)のチャートは底打ち反転のシグナルが点っているが、長期の週足チャートは、相場の上昇局面では通常、13週、26週線、52週線と短期、中期、長期の順に並ぶのだが、今回は長期の52週、中期の26週、短期の13週と逆の並びとなっている。過去の経験則でこうした並びの場合、1年程度は軟調な相場となることが多く長期トレンドでは下向きとみるところだ。もちろん、相場が反転すればこの順番も変わるが余程大きな上げとならない限り難しい。
市場を取り巻く環境を見ても、4月に発動した相互関税が実体経済に影響を及ぼしつつある中、3万8000円台を積極的に買い上がっていく動きにはなりにくいと思われるが、15~17日に予定されている主要7カ国(G7)首脳会議に合わせて実施されると見られている日米首脳会談の結果を見極めたいと週後半は様子見姿勢が強まりそう。また、13日に6月限メジャーSQ(特別清算指数算出)を控えていることでポジション整理に伴う乱高下も想定される場面だ。こうしたことから、来週の日経平均の予想レンジは3万7200円~3万8500円とする。
■来週の主な予定
09日(月)【国内】1-3月期GDP(8:50)、5月景気ウォッチャー調査(14:00)
【海外】中国5月生産者物価・消費者物価・貿易収支(10:30)
米アップル年次開発者会議「WWDC」開催(13日まで)
10日(火)【国内】5月マネーストック(8:50)
11日(水)【国内】5月国内企業物価指数(8:50)
【海外】米5月消費者物価CPI(21:30)、米5月財政収支
12日(木)【国内】4-6月期法人企業景気予測調査
5月都心オフィス空室率
【海外】米5月生産者物価指数PPI
米前週分新規失業保険申請件数
13日(金)【国内】メジャーSQ
4月第三次産業活動指数、4月鉱工業生産・設備稼働率
東京都議会議員選挙告示(6月22日投開票)
【海外】ユーロ圏鉱工業生産指数(18:00)
米6月ミシガン大学消費者信頼感指数速報
(2025年5月31日)
騰勢一服の展開か
■今週最大のイベントだったエヌビディアの2~4月決算は売上高が市場予想を上回り、株価も時間外取引で上昇。これを受け29日の日経平均は半導体関連を中心に買いが先行。さらに、米連邦裁判所がトランプ大統領の関税措置の一部を差し止める判決を下したことも追い風にショートカバーを巻き込み上げ幅を拡大。一時3万8454円まで買われた。戻り相場最後の抵抗ラインとなっていた200日線を大きく回復し、25日線が75日線を上に突き抜けるゴールデンクロスも示現。チャートは上昇転換のシグナルが点った。
しかし、翌30日は29日に急反発した反動や為替が円高に振れたことから売りが先行。一時前日比684円安の3万7748円となる大幅反落。終値は3万7965円と5日線(37874円)を維持したが・・・
30日のNYダウは前日比54.3ドル高の4万2270ドル、ナスダック総合指数は同62.1ポイント安の1万9113.7ポイント。NY株は小幅に高安まちまちだったが、夜間取引の日経先物は大証終値比280円安の3万7680円と一段安。一時は3万7390円まで下げる場面があった。チャートは5月13日の戻り高値3万8494円と並ぶダブルトップで騰勢一服を感じさせる形となっている。
日本株軟調の背景に円高と、もう一つ金利上昇リスクが浮上している。円高は説明するまでもないが、QUICKによると東証株価指数(TOPIX)ベースの予想配当利回りは2.54%程度、これに対して新発20年物国債利回りは2.4%まで上昇し約15年ぶりの逆転も視野に入ってきている。要するに利回りがさほど変わらないのなら、機関投資家は投資資金をリスクのある株式から安全な国債へ移す可能性が高くなるからだ。
来週は調整含みの動きが予想される。下値不安は薄れているものの3万8000円より上は過去の価格帯別累積出来高から戻り売り圧力は強い。また、週後半にかけては5月の米雇用統計の発表を見極めたいとして様子見姿勢も強まりそう。
目先の判断ポイントは5日線(30日現在・3万7874円)に対してどう動くかだが、5日線が上値ラインになってくると調整ムードが強まり上昇してきている25日線(同3万7091円)が意識されてくる。円安の動きがあれば3万8500円程度まではありそうだが、来週の日経平均は3万7000円~3万8500円のレンジを予想。
■6月第1週(2日~6日)の日程では、国内で大きな経済指標のイベントは見当たらない。
経済・労働統計としては、米国の2日「米5月ISM製造業景況指数」、6日の「米5月雇用統計」が焦点。米5月ISM製造業景況指数は前回の48.7に対して今回は49.2が予想され、景況感の改善が期待される。米5月雇用統計は非農業部門雇用者数が前月の17.7万人を下回る13万人予想も、失業率は4.2%と横這い見込みで大きな波乱は回避される見込み。一方、国内は3日の「植田日銀総裁が内外情勢調査会で講演」とファーストリテイリング5月国内売上高に関心。むしろ、物色テーマ的に、5日の任天堂「スイッチ2」発売、6日午前4時24分の東証グロースのスペースベンチャー・アイスペース<9348>による日本・アジア初となる民間企業による月面探査機着陸が話題材料となりそうだ。アイスペースは23年4月の第1回目の着陸失敗のリベンジなるか。成功すれば宇宙ベンチャーが複数上場しているグロース物色が一段と高まる可能性がある。
ちなみに、6月相場は過去17年で日経平均は10回上昇、7回下落と勝ち越し、過去2年は上昇、自社株買いと配当再投資期待が需給を支える傾向が強まることがポイント。
■来週の主な予定
2日(月)【国内】1-3月期法人企業統計(8:50)
【海外】米5月ISM製造業景況指数
3日(火)【国内】植田日銀総裁が内外情勢調査会で講演
ファーストリテイリングが5月国内売上高
【海外】中国5月Caixin製造業PMI(10:45)
韓国大統領選挙
米4月製造業受注、米4月JOLTS求人件数
4日(水)【海外】米5月ADP雇用統計、米5月ISM非製造業景況指数
ベージュブック(米地区連銀経済報告、5日3:00)
5日(木)【国内】4月毎月勤労統計調査(8:30)
任天堂「スイッチ2」発売
【海外】ECB定例理事会、ラガルド総裁会見
米4月貿易収支、米ブロードコムが決算発表
6日(金)【国内】4月家計調査(8:30)、4月景気動向指数(14:00)
ispace<9348>の民間企業初となる月面探査機着陸予定日
【海外】米5月雇用統計(21:30)
米4月消費者信用残高(7日4:00)
(2025年5月24日)
為替の動向とエヌビディア決算が焦点に
■今週の日経平均は米格付け会社ムーディーズによる米国債の格下げを受けて下落のスタート。そして円高も進み22日に安値3万6855円と、次の下値メドとした75日線(23日時点・3万6861円)まで売られた。その後は反発し75日線までの突っ込みで下げが一巡したムードも出た。が、しかし・・・。
トランプ米大統領が23日、欧州連合(EU)に対して50%の関税をかけると表明。また、アップルに対して米国内でスマートフォンを製造しなければ「少なくとも25%の関税を払わなければならない」との考えも示した。落ち着きを見せつつあった関税を巡る不透明感が再び意識され、23日のNYダウは前日比256ドル安の4万1603ドルと4日続落。アップルは8日続落となるなどナスダック総合指数も同188.5ポイント安の1万8737.2ポイントと反落。トランプ政権の関税政策を巡る不透明感。そして、米政府の財政悪化に歯止めが掛からない中で米国債の格下げが重なったことで、再び株・債券・為替の「米国売り」が意識されかねない状況となっている。これを受けて、NY円相場も1ドル=142円50〜60銭と円高が進行し、夜間取引の日経先物も大証終値比360円安の3万6830円と再び75日線のところまで押し返されている。
来週の東京株式市場は75日線の攻防が意識される。75日線は比較的強い抵抗ラインとなるところだが、それだけにブレイクされると上昇から下落相場への転換サインとなる。
ポイントは、米財政収支の悪化などを背景にドル売り圧力は強まっているが、足元の円高基調が反転するか。そしてもう1つは、日本時間29日朝に発表される米半導体大手エヌビディアの決算。前回のエヌビディアの決算では好業績こそ維持したものの市場の反応は厳しく、日本の半導体株を含めた関連セクターを巻き込み急落した。ただ、当時はディープシークショック直後でAI関連は売りが出やすい状況にあった。また、今回はサウジアラビアが巨額投資を表明したことで中東マーケットへの期待も台頭。中東でのAI需要への思惑から強気の見通しが示されるのではないかとの見方が浮上しているが、エヌビディア決算で強気の見通しが示されれば、国内の関連株の上昇を通じて日経平均が押し上げられる可能性がある。
株・債券・為替の「米国売り」が再び懸念され、どちらかと言えば下ブレが心配される場面だが、来週の日経平均の予想レンジは3万6000円~3万8000円とする。
■来週の主な予定
26日(月)【国内】4月企業向けサービス価格
【海外】メモリアルデー(戦没者追悼の日)で米国市場休場
27日(火)【国内】セブン&アイHDが株主総会
【海外】米4月耐久財受注、米3月FHFA住宅価格指数
米3月S&PコアロジックCS住宅価格指数
米5月CB消費者信頼感指数
28日(水)【国内】5月末権利付き最終売買日
【海外】米5月6日~7日開催FOMC議事要旨公開
リッチモンド連銀製造業指数(23:00)
米エヌビディア、セールスフォースが決算発表
29日(木)【国内】5月末権利落ち日
【海外】米1-3月期GDP改定値
米前週分新規失業保険申請件数
30日(金)【国内】4月失業率・有効求人倍率(8:30)
4月鉱工業生産速報(8:50)
4月百貨店・スーパー販売額(8:50)
【海外】米4月個人所得・個人支出PCE
米5月シカゴ購買部協会景気指数
米5月ミシガン大学消費者信頼感指数
(2025年5月17日)
為替がカギ、日米財務相会談と関税交渉が焦点に
■今週の日経平均は10~11日に行われた米中貿易協議の進展を好感して買いが先行。そして米中貿易協議の進展で12日のNY株が大幅高となった流れを受け翌13日は3万8494円まで買われた。しかし、13日デイリーで25日線との乖離が9%に迫るなど短期的な過熱感はかなり高まっているとしたが、さすがに高値警戒感から週後半は調整含みの動きとなった。25日線の9%乖離は滅多に出ない過熱数値だが、相場の買われ過ぎ売ら過ぎ表す25日騰落レシオも15日に146.5%と1年8カ月ぶりの高水準をつけた。何よりも、4月初旬の3万1000円割れから3万8500円近辺まで値幅で約7500円、率にして25%もの急上昇。当然の一服といえる場面だが、問題は単なるスピード調整か、それとも値幅や日柄を伴った調整に向かうのか。
ただ、NY株は何だかんだと言っても堅調で、円高が日本株の重荷となっている。ちなみに、16日のNYダウは前日比331.9ドル高の4万2654.7ドルと続伸。週間で1405ドルの上昇で3月上旬以来、約2カ月ぶりの高値で終えている。ナスダック総合指数も同98.7ポイント高の1万9211.1ポイントと反発。一方、夜間取引の日経先物は大証終値比30円高の3万7800円と小動きで、NY円相場も1ドル=145円65〜75銭と円高方向にある。
市場では為替が日本株のカギを握るとした見方が多いが、そうした面で来週は日米の財務相会談と関税交渉が最大の焦点になる。20日からカナダで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席する加藤財務相は、ベッセント米財務長官と為替について協議する意向を明らかにしている。米国と韓国の交渉で為替政策も議論したと伝わっており、日本側が円安是正を求められるとの思惑が再燃している。短期間で大きく上昇したあとだけに為替が一段の円高に振れるようなら日経平均も値幅を伴って調整に向かう可能性がある。テクニカル的には、5日線(16日現在・3万7892円)、200日線(同3万7858円)に対してどう動くかが調整の度合いを判断するポイントとなるが、荒い値動きも予想され、来週の日経平均は3万6800円~3万8200円のレンジを予想。
■5月第4週(19日~23日)は日米ともに相場に与える影響が大きい経済・労働統計の発表は見当たらない。米国ではアルファベットの中核企業であるグーグルが20日から2日間の日程でカリフォルニア州マウンテンビューにおいて恒例の「年次開発者会議」を開催する。主要テーマとなる生成AI関連テーマ物色を刺激するか注目される。一方、国内では、21日大引け後に日本政府観光局から発表される「4月訪日外客数」は3月の前年同月比13.5%増と同月の過去最高に続く大幅増加が期待される。4月上旬の桜花見需要や4月13日開幕の「大阪・関西万博」効果などが来日増加を促している可能性がある。この他、5月20日は4月24日に続き任天堂<7974>の公式ストアサイトでの「スイッチ2」の抽選販売結果が発表される。発売は6月5日。なお、5月26日の米国市場はメモリアルデー(戦没者追悼の日)で休場となることから、週末から3連休となる。
■来週の主な予定
19日(月)【国内】3月第三次産業活動指数(13:30)
【海外】中国4月工業生産・4月小売売上高(11:00)
20日(火)【国内】4月首都圏新築マンション発売(14:00)
東京海上、MS&AD、SOMPOHDが決算発表
【海外】米ホームデポが決算発表、米グーグルの開発者会議(21日迄)
G7財務大臣・中央銀行総裁会議(カナダ、22日まで)
21日(水)【国内】4月貿易統計(8:50)、4月訪日外客数(16:15)
【海外】米原油在庫
22日(木)【国内】3月機械受注(8:50)
【海外】米前週分新規失業保険申請件数
米5月S&Pグローバル米国製造業PMI
米4月中古住宅販売件数
23日(金)【国内】4月全国消費者物価指数(8:30)
【海外】米4月新築住宅販売件数
(2025年5月10日)
チャートは好転、次は200日線が意識される。
■大型連休を挟んで株式市場は予想以上の強さを見せた。大型連休入り前の4月25日の日経平均終値は3万5725円、そこから9日の日経平均終値は1778円高となる3万7503円。中期的な売り買いの転換点となる75日線(9日現在・3万7095円)をおよそ3カ月ぶりに奪回。一目均衡表(日足)の「雲」にも突入しチャートの好転を示唆している。米英の関税交渉が成立し、米中貿易摩擦が緩和に向かうとの期待が高まっており、投資家心理は改善しつつある。また、9日の市場はこれまでの弱気ポジションが踏み上げに転じた雰囲気もかがえた。
目先の焦点となるのは、10~11日に予定されている米中高官協議だ。トランプ米大統領は「極めて友好的なものになる」との見方を示しているが、市場では米中協議について貿易摩擦を和らげる協定を結ぶ見通しになれば、株式相場は上昇、協議が物別れに終われば市場は再びリスク回避の姿勢を強めるとの見方だ。ただ、大きな進展はないにしても、これまでのような嫌悪なムードとならなければ基本的な上昇スタンスを変える必要はないと思われる。決算発表も大方一巡したが、失望決算となったトヨタ自動車7203を見てもトランプ関税や円高を一因に新年度の減益計画を打ち出しても先行した株価の下げで既に織り込まれている感じだ。支離滅裂なトランプ氏のことでまだ安心は出来ないが、上昇の素地は整いつつあると見て良さそうだ。むしろ、チャートの好転という視点からは、慎重になり過ぎると投資の機会を逃すことになるかもしれない。
米英による貿易合意の流れが、米中協議を始めとした他国との協議に波及するかが焦点となるが、基本的には、日経平均は戻りを試す動きが期待されている。ただ、前回も述べたが昨年後半にもみ合ったレンジ下限の3万8000円より上のゾーンには戻り売りが多く控えているとみられる。チャート上では200日線(同・3万7937円)が次の戻りメドとして意識されるが、3万8000円に接近するにつれて戻り売りが活発化する可能性が高い。来週の日経平均の予想レンジは3万6800円~3万8100円とする。
■来週の主な予定
12日(月)【国内】4月景気ウォッチャー調査(14:00)
【海外】米4月財政収支
13日(火)【国内】4月30日、5月1日の日銀金融政策決定会合の「主な意見」
フジクラ、ニトリ、ソフトバンクGが決算発表
【海外】米4月消費者物価指数CPI(21:30)
14日(水)【国内】4月国内企業物価指数(8:50)
鹿島、ソニー、楽天、サンリオが決算発表
MSCI銘柄入替定期見直し(5月30日終値反映)
【海外】米原油在庫
15日(木)【国内】ブリヂストン、日本郵政、三菱UFJ、キオクシアが決算発表
決算シーズン終了
【海外】米5月NY連銀製造業景気指数、米4月生産者物価指数PPI
米4月小売売上高(21:30)、米4月鉱工業生産・設備稼働率
16日(金)【国内】1-3月期GDP速報(8:50)
3月鉱工業生産確報・設備稼働率(13:30)
フジメディアが決算発表
【海外】米4月住宅着工件数、米4月輸出入物価
米5月NY連銀ビジネスリーダーズサーベイ
米5月ミシガン大学消費者信頼感指数
(2025年5月2日)
中期的な上昇、下降の転換点となる75日線が射程圏に
■今週の日経平均はNY株の連騰に、日銀の早期利上げ観測後退で2日に掛けて7連騰。2024年1月15日に掛けての6連騰を抜き、2023年8月23日から9月6日の8連騰に次ぐ連騰記録で、3月以来となる3万7000円目前まで上伸。米国の相互関税についてトランプ大統領の姿勢が柔軟になってきたことで、関税問題も相場も最悪期を脱したとみる関係者が増えている。また、懸念されていた国内企業の決算も思ったほど悪くない。
引き続き相互関税に関する米政府の姿勢が注目材料となるが、トランプ大統領の突発的な発言がない限り、基本的には強含みの相場が想定されている。ただ、大きく戻してきていることで、2日の米雇用統計や6~7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)がネガティブサプライズとなった時は、リバウンド一巡感から一時的に調整幅が大きくなる可能性もある。また、連休明けの為替の水準のほか関税の日米協議の状況、さらには企業決算の内容とったいくつもの要素も絡み合う。
テクニカル面では75日線(2日現在・3万7152円)が大きな戻りメドとして意識される。また、日経平均で3万8000円は長期間もみ合ったレンジ下限であることで、75日線を抜け上値を追った場合でも3万8000円に接近するにつれて戻り売りが活発化する可能性が高い。来週の日経平均の予想レンジは3万6000~3万7500円とする。
■来週の主な予定
5日(月)【国内】「こどもの日」で東京市場休場
【海外】米4月ISM非製造業景況指数
6日(火)【国内】振替休日で東京市場休場
【海外】FOMC初日、米3月貿易収支
米アドバンスト・マイクロが決算発表
7日(水)【国内】JT、LINEヤフー、川崎汽船が決算発表
【海外】FOMC最終日、パウエルFRB議長会見
米ウォルト・ディズニーが決算発表
8日(木)【国内】3月18日、19日開催の日銀金融政策決定会合議事要旨
トヨタ、IHI、任天堂、日本郵船が決算発表
【海外】米前週分新規失業保険申請件数
9日(金)【国内】オプションSQ
3月毎月勤労統計調査、3月景気動向指数
日本製鉄、パナソニック、三菱重工、NTTが決算発表
【海外】中国4月貿易収支
(2025年4月26日)
チャートは調整一巡から再上昇に
■前回、トランプ政権のFRB(米連邦準備制度理事会)への介入は金融市場が不安定になる危険を孕んでいるとしたが、中央銀行の独立性を軽視するトランプ氏の発言で21日のNY市場は株安、ドル安、債券安の米国売りが再燃。NYダウは前営業日比971.8ドル安、ナスダック総合指数も同415.5ポイント安と揃って大幅続落となった。
NY株の大幅安、しかもドル円相場も一時139円台まで円高が進行し、これまでなら東京市場も急落となっていただろうが、22日の日経平均は59円安と小幅な下げに留まった。この日のデイリーで「強さを見せてきている」としたが、トランプ政権への不信感から米国マネーが日本株に入り込んできているのか?この日を境に潮目の変化が顕著となった。
そして相変わらずだが、政権による中央銀行への介入がどういう事態を招くか分かっていなかったのだろう。米金融市場が株安、ドル安、債券安の動きを見せたことでトランプ氏はFPBに対するちょっかいを慌てて否定。また、関税問題も中国がまともに相手にしなくなったら、手のひらを返したようにトランプ大統領やベッセント財務長官から関税を巡る対中強硬姿勢の緩和を示唆する発言も相次いだ。
米高関税政策への過度な警戒感やパウエルFRB議長を批判したことで生じた金融市場の動揺が落ち着いてきたほか、FRB高官から早期利下げに含みを持たせる発言も聞かれるなど、強い向かい風が吹いていた市場環境は変わってきている。株価も週末にかけ大幅に3日続伸となり戻り相場の正念場である25日線(25日現在3万4930円)を大きく突破。5日線(同3万4822円)が25日線を上抜くゴールデンクロス(GC)も指呼に入っており、チャートは調整一巡から再上昇に転じた形となっている。
一方、今回の決算シーズンでは関税の影響を織り込んだかなり控えめな発表や、非開示とする企業も出てくることが予想され厳しいとみていたが、どうやらその見方は修正を余儀なくされてきそうだ。今週はファナック6954やスタンレー電気6923、信越ポリマー7970などが決算発表で26年3月期通期予想の開示を見送ったものの株価は総じて堅調。さらに富士通6702など予想以上に主力銘柄の決算は好調で、増益率見通しが決して高くはないニデック6594の株価感応度も高かった。トランプ関税により先行して売り込まれた銘柄は、トランプ関税に対する懸念が和らいできたことで、慎重な新年度の業績見通しが示されても悪材料視されにくくなっているようだ。ただし、これは大きく売り込まれた外需株に限る動きで、大きく売り込まれていない内需株はその限りでないと見ておくところだろう。
もちろん、米中貿易摩擦の行方はまだ予断を許さない。また、米アップル(1日)などハイテク大手の決算が相次ぐ中、国内では大型連休(GW)の谷間に当たる上、翌週には米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えており手掛けにくさが意識される。25日夜間取引の日経先物は大証終値比250円高の3万6030円と早くも3万6000円台に乗せ、予想より強い動きを見せているが、GWが明けるまでは持ち高を増やしにくく積極的に上値を試す展開にはなりづらいと思われる。上値は4月第1週の大陰線を埋め切る3万6440円あたりが週を通じて意識されそうで、来週の日経平均は3万4800円~3万6500円のレンジを予想。
■来週の主な予定
28日(月)【国内】日立、三菱電機、NEC、TDK、OLC、東京地下鉄が決算発表
4月権利落ち日
29日(火)【国内】「昭和の日」で東京市場休場
【海外】米3月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
米4月コンファレンスボード消費者信頼感指数
30日(水)【国内】日銀金融政策決定会合初日
3月鉱工業生産速報値、3月新設住宅着工戸数(14:00)
商船三井、村田製作所、JR東日本、ANA、東京エレクトロンが決算発表
【海外】中国4月製造業購買担当者景気指数PMI(10:30)
米4月ADP雇用統計、米1-3月期実質国内総生産GDP速報値
米4月シカゴ購買部協会景気指数、米3月個人所得・個人支出PCE
米キャタピラー、マイクロソフト、メタが決算発表
01日(木)【国内】日銀金融政策決定会合最終日、植田日銀総裁会見(15:30)、日銀展望レポート
日米貿易交渉2回目予定
HOYA、三井物産、住友商事が決算発表
【海外】米前週分新規失業保険申請件数
米4月ISM製造業景況指数
米マクドナルド、アップル、アマゾンが決算発表
02日(金)【国内】3月失業率・有効求人倍率(8:30)
ファーストリテイリング4月国内ユニクロ売上高速報
伊藤忠、三菱商事。エムスリー、日本航空が決算発表
【海外】米4月雇用統計、米3月製造業新規受注
米シェブロンが決算発表
(2025年4月19日)
切り返しを鮮明にしてきたが、戻る場面はまだ売られやすいか?
■今週の日経平均は5日線(18日時点・3万4255円)を支えに水準を切り上げた。週末18日終値は3万4730円と直近下げ幅の半値戻しの水準となる3万4500円台を回復し、4月初旬の急落相場からの切り返しを鮮明にしている。注目された日米の相互関税交渉で為替の議論が出なかったことや、トランプ大統領が今後の交渉に前向きなコメントを出したことによる安心感から底上げの動きとなった。この他、対立が激化していた米中も中国が態度軟化の動きを見せ、関税引き上げの応酬はけん制を交えつつも手打ちを探る感触が出てきたことも買い安心感につながっている。
もっとも、相互関税の事態は何ら改善していない。何よりも朝令暮改を繰り返すトランプ大統領のこと。また、トランプ大統領はSNSで意に沿わないパウエル議長を「一刻も早く解任すべきだ」と発信。法的権限があるのか?疑問だが、関税をめぐる強硬策に続くFRBへの介入は、米国の金融市場が不安定になる危険を孕んでいる。まだまだ安心は出来ない。
4月初旬の波乱相場は落ち着きを取り戻し、取り敢えずは一進一退ながらも上値を試す動きとなりそうだ。ただ、来週のルネサスエレクトロニクス6723、キヤノン7751、富士通6702、デンソー6902、キーエンス6861などを皮切りに本決算の発表が始まる。最大の焦点はトランプ関税の影響を企業がどうみているかだが、日本企業の経営陣はただでさえ期初は慎重な見通し出すことが多い。当然、米関税政策を巡る不透明感が残っている現状では、関税の影響を織り込んだ数字を発表する企業や、非開示とする企業も出てくることが予想される。慎重な見通しだと分かっていても、一旦失望される心配はあり、少なくとも決算を手掛かりにどんどん上値を追う展開は見込みづらい。そのため、当面は買い戻しが中心で戻る場面は売りが優勢となりそう。
株価的には3万5000円台に乗せる可能性はあるが、上は25日線(3万5474円)の位置する3万5500円近辺が強い上値抵抗となりそう。下値のメドとしては4月11日の終値(3万3585円)近辺が意識され、日経平均の予想レンジは3万3500~3万5500円とする。
■来週の主な予定
21日(月)【国内】3月首都圏新築マンション発売
【海外】中国ローンプライムレート
22日(火)【国内】デジタルグリッドが東証グロースにIPO
天皇主催「春の園遊会」(赤坂御苑)
【海外】米4月リッチモンド連銀製造業指数
米マイクロソフト、テスラ、ベライゾン決算発表
23日(水)【国内】ファナック、シマノ、日本航空電子決算発表
【海外】米4月S&Pグローバル米国製造業PMI
米3月新築住宅販売件数、米ベージュブック
米ボーイング、IBM、テキサス・インスツルメンツ決算発表
24日(木)【国内】LIFE CREATEが東証グロースにIPO
野村総研、キヤノン、中外製薬、ニデック決算発表
【海外】中国MLF(中期貸出制度)金利
米3月耐久財受注、米前週分新規失業保険申請件数
米中古住宅販売件数、米P&G、インテル決算発表
25日(金)【国内】4月東京都区部消費者物価指数(8:30)
エレベーターコミュニケーションズがアンビシャスにIPO
デンソー、信越化学、アドバンテスト、キーエンス決算発表
【海外】米4月ミシガン大学消費者信頼感指数確報
(2025年4月12日)
底打ち感は出てきたが、まだ下ブレ不安は拭いきれない
■今週の日経平均はトランプ政権による貿易摩擦の激化が警戒され、4月7日に一時前週末比2987円安となる3万0792円まで急落。昨年8月5日の暴落時に付けた3万1156円を割り込み、取引時間中としては約1年5カ月ぶりに3万1000円も割り込んだ。その後もトランプ大統領のブラフに振り回され8日は前日比1876円高、9日は同1298円安、10日は同2895円高、11日は1024円安と典型的な「鯨幕相場」(高安を交互に繰り返す相場)となり大きく乱高下した。
ただ、日経平均のPERは暴落した7日に12倍台半ばまで低下し一旦はオーバーシュートの領域まで突っ込んだ形と考えられる。チャートも昨年8月5日と4月7日の安値で二点底形成となる底入れシグナルとした見方が広がっている。こうした中、11日のNYダウは前日比619ドル高の4万0212.7ドルと反発。FRB(米連邦準備理事会)高官が、金融市場が混乱した場合、市場安定化のために「確実に対処する準備ができる」と語ったことが安心感につながった。NYダウは週間で1897ドル高と3週間ぶりに上昇し、週間の上げ幅は24年11月上旬以来の大きさとなった。ナスダック総合指数も同337.1ポイント高の1万6724.4ポイントと反発。週間の上昇率は7.2%と、こちらは22年11月上旬以来の大きさとなっている。夜間取引の日経先物は大証終値比200円高の3万3720円。トランプ大統領の関税政策が株式相場を下押ししてきたが、大部分の貿易相手に対する相互関税の上乗せ部分の一時停止が打ち出され、株安にひとまず歯止めがかかった格好となっている。
もっとも、中国政府は11日、米国の関税引き上げに対し米国製品に対する輸入関税を84%から125%に引き上げるなど、米中は現実離れした高関税の応酬で貿易戦争に突入した格好となっている。気になるのは、相対的に安全な資産とされる米国債が売られ米長期金利が上昇し始めたことだ。「中国が報復措置として米国債を売却する」とした憶測も流れていたが、世界中の機関投資家が組み込んでいる米国債の下げ(利回り上昇)は市場が最も恐れる金融不安につながる心配がある。実際、10日の米市場では株安と債券安に加え、ドルも主要通貨に対して下落するトリプル安の展開となった。マーケットは米国発の「金融危機」を読み始めている感もあるが、仮に米国発の「金融危機」という不幸を呼び起こしてしまったらこの程度のマーケットの混乱で済むとは思えない。
他の国だけでなく、中国にもトランプ氏が態度を変えるかが今後の市場の命運を握っている。が、いかんせんトランプ氏がどうしようもない。どういう正義や正当性があるかは理解できないが「お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ・・・」と某子供向け番組に出てくるガキ大将のような理不尽な要求も平気で突きつけてくる始末で、トランプ氏が大統領職に就いている限り不毛なやりとりは続きそう。
当面の底は7日安値3万0792円となりそうだが、何の思慮もなく場当たり的な発言を繰り返すトランプ氏だけにまだ下ブレ不安は拭いきれない。また、急速に進んできたドル安・円高も日本株にはマイナスだ。引き続きボラティリティー(変動率)の高い相場展開が予想されるが、来週も予想レンジは3万1700円~3万6000円と大きく取る。
■来週の主な予定
14日(月)【国内】2月鉱工業生産指数確報・設備稼働率(13:30)
【海外】米ゴールドマン・サックス決算発表
15日(火)【海外】ユーロ圏2月鉱工業生産指数確報
米4月NY連銀製造業景気指数
米財務省、半期為替政策報告書提出期限
16日(水)【国内】2月機械受注(8:50)
【海外】中国3月小売売上高、3月鉱工業生産指数(11:00)
米3月小売売上高、米原油在庫
米3月鉱工業生産指数、設備稼働率(22:15)
17日(木)【国内】3月貿易収支(8:50)
中川日銀審議委員が群馬県金融経済懇談会で挨拶
【海外】ECB定例理事会・政策金利(21:15)
米3月住宅着工件数、米4月フィラデルフィア連銀景況指数
米前週分新規失業保険申請件数
アメリカンエキスプレス、ネットフリックス決算発表
18日(金)【国内】3月全国消費者物価指数CPI(8:30)
【海外】グッドフライデー(聖金曜日)でNY市場休場(為替は通常取引)
(2025年4月5日)
世界同時不況も意識され始めたか!?
■相互関税の発表で一旦はアク抜けするという読みは甘かった。現地2日の相互関税発表(日本は24%)が新たな下げのスタートとなり関税発表を受けた株安は世界中を駆け巡った。
NYダウは3日に前日比1673ドル安となったのに続き4日も同2231ドル安の3万8314.8ドルと、2日間の下げ幅は3900ドルを超え2024年5月下旬以来、約10カ月ぶりの安値に沈み、昨年12月4日に付けた最高値から14.8%下げ「調整局面」入りとされる水準となっている。ナスダック総合指数も3日の同1050ポイント安に続き、4日も同962.8ポイント安の1万5587.7ポイントと大幅に続落。昨年12月に付けた最高値からの下落率は「弱気相場」入りの目安とされる2割を上回った。「恐怖指数」とも呼ばれる米株の変動性指数(VIX)は4日、45台と20年4月以来5年ぶりの高水準。主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)も7.6%下げている。
4日朝発表の3月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が市場予想を上回った一方、失業率は市場予想より高かった。強弱入り交じる内容だったが、パウエル議長は4日の講演で今後のデータや見通しを慎重に見極めると発言、景気懸念が強まるなかでもFRB(米連邦準備理事会)による早期の救出は見込めないとの観測が相場の重荷となった。
そして夜間取引の日経先物も大証終値比1540円安の3万2220円と一段安で、昨年8月5日の大暴落時に付けた3万1156円に迫っている。東証プライムの売買代金は連日で7兆円に迫り一部ではセリングクライマックスとの声も聞かれるが、トヨタ自動車、ソニーグループ、三菱UFJなど直近の相場をリードしていた時価総額トップの「ど真ん中」が売られ市場マネーはリスク資産から債券に逃避。ファンド関係者から株価が戻せば株式のポジションを少しでも軽くしたいとする声も多く聞かれた。また、4日は下げに抵抗を見せていた東証グロース250指数も急落。これは追い証の発生による投げ売りが急増したとみられ、個人も待ったなしの追い証の整理に迫られているようだ。
中国が4日に米国の相互関税への報復措置を発表。関税の応酬による景気や企業収益の悪化を懸念した売りが膨らみ下げ幅を拡大したが、負の連鎖は市場が最も恐れる世界同時不況が意識され始めたことにあり、予断を許さない状況となっている。
それにしても、トランプ大統領は頭が少しおかしいのでは?と早くから危惧してきたが、いよいよ常軌を逸脱してきた。
3月4日の施政方針演説はあまりのひどさに驚いてしまったが、民主党のバイデン前大統領を「史上最悪の大統領」と名指しで批判し、失政をあげつらう言動を連発。一方で、自らの支持層だけに向けて実績を誇示し悦に入っている表情は一種の狂人のようにも見えたが、およそ民主主義国家の盟主である米国のリーダーとしてふさわしくない内容だった。意に沿わない政敵を徹底的に粛清し、大きな軍事力や経済力を背景に弱者を脅して領土や権益の拡大を試みる。そうロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席がそうであるように強権国家の指導者とさほど変わらないように映る。
さらにウクライナへの対応も「さすがにひどい」としか言いようがなかった。最も憂慮するのは不透明な軍事力の拡大を続ける中国が台湾の武力統一に踏み切る事態だ。ウクライナ侵略が成功すれば、中国も同じ行動を起こす「ドミノ理論」を正当化しかねない。中国とロシア、そして北朝鮮との軍事協力は着実に進み、同国の兵器の近代化も進んでいるが、中国やロシアなどに付け入る隙を与えかねないことには頭がまわらないのだろう。何よりも、いきすぎたナショナリズムが世界の分断を加速させ、人類史において最も悲惨な出来事となった第2次大戦に至る歴史を全く理解していない事が懸念される。
市場は改めてこの男のリスクを味わった格好だが、自分に忠誠を誓うイエスマンだけで側近を固め、自分に意見する者は排除する、「裸の王様」になっているトランプ氏のやりたい放題をこれ以上許してはならないと思う次第だ。
足元は総悲観の状態だが、大きく下落していることでさすがに下げすぎ警戒感も出るところ。凍り付いた投資家心理が完全に溶けるには相応の時間もかかりそうだが、来週は底打ちの手掛かりをつかめるかが焦点となる。NY株や為替にらみの荒い値動きが予想されるが、来週の日経平均の予想レンジは広く取らざるを得ず、3万1500~3万5000円とする。
■来週の主な予定
7日(月) 【国内】日銀支店長会議、4月地域経済報告(さくらリポート)
2月景気動向指数速報
IACEトラベルが東証スタンダードにIPO
【海外】ユーロ圏2月小売売上高(18:00)
8日(火) 【国内】景気ウォッチャー調査(14:00) ,2月国際収支
9日(水) 【国内】植田日銀総裁が第100回信託大会で挨拶
3月消費動向調査
【海外】3月18日、19日のFOMC議事要旨、米原油在庫
10日(木) 【国内】3月国内企業物価指数(8:50)
ファーストリテイリング<9983>が決算発表
【海外】米3月消費者物価指数CPI、
米前週分新規失業保険申請件数
11日(金) 【国内】生活意識に関するアンケート調査(日銀)
【海外】米3月生産者物価指数PPI
米ミシガン大学消費者信頼感指数速報